忍者ブログ
貴子という名前での生活がありました
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

りつ子ママと三人が面接した夜、 OK組の治子から電話があった。
オープニング要員となった里香と共に あの後
りつ子ママの知り合いのセレクトショップに連れて行かれたそうな。

2人とも 試着室に篭ったまま 次々に持ってこられた服を
着せ替え人形のように着た挙句 それぞれ1着ずつ持ち帰ったとのこと。
値札を見て 不安そうな顔をすると りつ子ママがウィンクして
「気にせんでええよ」 と 言ったらしい。
「大人っぽいのを無理して着るから いもくさくなるねん、 って言われたわ」と
楽しそうな声の治子。
数日後に また別の店で服を用意するらしく、
「りつ子ママって ぽんぽん言うけど いい人よね」 と 治子は続ける。
源氏名を決めた、 とか 彼氏には内緒にする、 とか
治子の声は興奮していた。

お嬢さん風に仕上がった治子と里香と共に
開店に向けてのミーティングに幾度となく参加した。
もちろん 私たちの他にもホステスはたくさんいる。
私や里香のようなオープニング要員も何名もいるのだが、
誰がそうだかなんて 興味がなかった。

ミーティングは レジャー会社の担当であるO部長が中心となってすすめられる。
O部長に初めて会った時、 りつ子ママは
「本当はこの子を チーフ(ちいママ)にしたかったのよ」 と
実際に チーフに決まっていたホステスの前で 私を紹介した。
苦笑いするしかなかった。

りつ子ママは私だけを常に特別扱いにした。
別に他の女性と 友達になりたいとは思わなかったけれども
健全なコミュニケーションが阻害されそうな程だった。
そして O部長もまた何故か私を贔屓し、 それを周りに隠そうとしなかった。

りつ子ママはともかく、
私だけを車で送るO部長の存在は ヒロの気に障ったようだ。
どっち向いてもめんどくさい状況に囲まれてしまった。
どんな条件を出されても オープニングしか手伝わないよ、 と
ヒロに 繰り返し言うしかなかった。


開店までカウントダウンが始まった頃、
りつ子ママからポートピアホテルに呼び出された。
車で来てくれ、 と言う。
声が妙にくぐもっている。
言われた通り 私は 指定された部屋に向かった。


そこには 半裸でベッドに横たわるりつ子ママと
見知らぬ大柄な女性が1人いた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
PR
水商売は、 学生バイトとしては やはり実入りが激しく良い。
服の趣味は 元々派手めが好きとはいえ
生活そのものは質素だった。
親元にいたし。
ちょっと割のいいバイト料程度の金額を手元に残して、
証券会社の投資商品を買う形で貯金していた。

だけど 水っぽい雰囲気がにじみ出てしまうのか、
芦屋の店で働きだして数ヶ月経った頃、
大学の下宿組の友達3人が 私のバイトを知りたがった。
一人の下宿先で 吊るし上げられて白状したら
「私もやりたいなあ」 と 異口同音。
そして次には
「どこか 私でも働けそうなところ、 ない?」 と 異口同音上書き。

Y氏と知り合ったクラブMのホステスりつ子さんから
三宮でお店を出すので手伝って欲しい、 と 言われた時期だったので
その話をすると 3人とも乗り気。
「素人っぽさ」 は ひとつのキャラとして売りになる。

りつ子さんの店といっても 大手レジャー会社が企画した シリーズ展開の店の一つで
彼女は雇われママをするに過ぎない。
私の目から見ると 大手資本の店ならば トラブル事が少ないだろうと
友人を紹介しやすかったのだ。


というのも、 かつてのクラブMで
りつ子さんと私が控え室で雑談を交わしていたら
マネージャーがあわてて私を物陰に呼びつけ
りつ子さんは金銭関係について要注意人物だから
深く関わってはいけない、と懇願されるように言われたことがあり
りつ子さんの 「手伝って」 は 気の重い申し出だったのだ。

美代に誘われて働き出した芦屋の店を言い訳に渋ると
「じゃ オープニングだけ」 とゴリ押しされたのだった。


さて、 友人3人を りつ子さんに紹介したわけだが
そこで りつ子さんに 「これからは ママと呼んで」 と 強く言われた。
そして 紹介した3人のうち、
1人はOK、 1人はオープニング3日間だけ、 1人はいらない、 との結論。

「もし 友達と一緒じゃなきゃイヤだ、 というのなら 3人とも来なくて結構。
 厳しいけれど 給料もらって仲良しごっこはできへんのよ。 今決めて」と
ばしっと 言われて その通りとなった。

3人とも 水商売の面接とあって、 可能な限り大人っぽい服に化粧で来たのだが
雇用が決まった二人は
「服も化粧も 素人っぽいというより いもくさい」 と
けちょんけちょんに言われ 「服買いにいくよ」と 連れて行かれた。
「いらない」と言われた一人の子と私がその場に取り残されたが
一緒にい辛かったので 「買物したいから」 と そそくさと逃げた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
PREV ←  HOME
Copyright (C) 2025 私が貴子だった頃 All Rights Reserved.
Photo by 戦場に猫 Template Design by kaie
忍者ブログ [PR]