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貴子という名前での生活がありました
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ある日、イワサキさんとヒロと3人で食事をすることになった。
「イワサキさんが 今度貴子も一緒にメシ食おうって」とヒロは言う。
他のお客様でも こういうことは時々あり
ヒロと私のことは 当然伝わっていない前提で参加するのが常だった。

「新地に連れていってくれるらしいから、服、かっこいいの着てきてな」
へえ、新地かぁ。

3人で待ち合わせ、新地の串焼き屋「雲仙」へ。
もちろん初めてのお店。

新地という場所には それまでにも何度か連れていっていただいており
どの店も 学生の私には場違いな敷居の高さを感じる。
連れてきてくださった方に せめて恥をかかしてはいけない、と
大人として求められていると想像する振舞いをしてきた。
続けていた茶道の所作が 思いのほか役に立つ。

「雲仙」はおまかせ&ストップのスタイル。
串焼きはとてもシンプルはいえ
あらゆる野菜と魚介類・肉の 想像もしない組合せに工夫があり
丁寧に下準備されているのがわかる。
馴染みの食材でも 今まで食べてきたものとは 全く違う味わいで供され
これがイカなの、こんな玉ねぎは初めて、と
ひと串食する度に感嘆の声をあげた。

イワサキさんは関西人らしく 小ネタを散りばめながら話をする。
美味しく楽しく笑いながら時間が過ぎる。

焼いているだけなのに 串の味わいは多種多様で飽きることがない。
お腹はそこそこ満ちてきても 次に出てくるものの好奇心が優勢で
ストップと言うことができない。

イサワキさんが「今日 ヒロくんに頼んで貴子ちゃんに来てもらったのはな、」と
おもむろに話題を変えたのは そんなタイミングだった。
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