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貴子という名前での生活がありました
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妙な感覚なのだが ゴローさんの股間を感じた時、
冷静になるのがわかった。

うわー、ヤりたくてめっちゃ必死・・・

力の続く限り暴れながら
やられちゃっても仕方ない状況よね、 と諦めもあったりして。
それでも 決め台詞は何にしようか考えてみる。
そうだ、 この人 プライドだけは高いんだった。

「オンナいないんですか?」
絶叫に近かったはずだが 効果はあった。

ゴローさんはさっと 身体を離し、 無言で
いつの間にかはずしていたベルトを締めた。

「時計、 いらないです」
それだけ言って 服の乱れを直すためにバスルームに逃げた。


オンナに不自由して モノと力で何とかしようとするオトコ。
百歩譲って 私に血迷ったのだとすると
そんな目で見られるのは 想像以上に屈辱なはずだ。
自称もてもてゴローさんだもの。


その後のゴローさんは とても紳士だった。
時計を返そうとすると モノで釣ろうとしたのではない、 と
がんとして受取らない。
電車で帰る、 と 申出ても
今日連れてきた自分が送るべきだ、 と 主張する。

そして帰り道は無言が続いた。
その頃には 私はすっかりゴローさんと会話しようという気がなく
ぼーっと窓の外を 何を見るでもなく眺めていた。

ゴローさんは
煙草のポイ捨てをとがめられたのが 恥ずかしかった とか
キミはこんな気詰まりな空気に耐えられないはずだ とか言っていたが
めんどくさそうな私の前では
それらはほとんど独り言と化していた。

「貴子、 キミは大人なのか子供なのか」
唐突にゴローさんが聞いた。
「どーなんでしょうね」 としか 答えなかった。

今なら答えることができる。
早く大人になりたい子供だったと。

ゴローさんの話は これで終了。
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