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- 04/16 [PR]
- 03/23 14. りつ子ママと大学の友達 その2
- 03/15 13. りつ子ママと大学の友達 その1
- 10/26 12. 初めての水商売 番外編 〜Y氏の後日談〜
- 10/24 11. 初めての水商売 その3
- 10/18 10. 初めての水商売 その2
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りつ子ママと三人が面接した夜、 OK組の治子から電話があった。
オープニング要員となった里香と共に あの後
りつ子ママの知り合いのセレクトショップに連れて行かれたそうな。
2人とも 試着室に篭ったまま 次々に持ってこられた服を
着せ替え人形のように着た挙句 それぞれ1着ずつ持ち帰ったとのこと。
値札を見て 不安そうな顔をすると りつ子ママがウィンクして
「気にせんでええよ」 と 言ったらしい。
「大人っぽいのを無理して着るから いもくさくなるねん、 って言われたわ」と
楽しそうな声の治子。
数日後に また別の店で服を用意するらしく、
「りつ子ママって ぽんぽん言うけど いい人よね」 と 治子は続ける。
源氏名を決めた、 とか 彼氏には内緒にする、 とか
治子の声は興奮していた。
お嬢さん風に仕上がった治子と里香と共に
開店に向けてのミーティングに幾度となく参加した。
もちろん 私たちの他にもホステスはたくさんいる。
私や里香のようなオープニング要員も何名もいるのだが、
誰がそうだかなんて 興味がなかった。
ミーティングは レジャー会社の担当であるO部長が中心となってすすめられる。
O部長に初めて会った時、 りつ子ママは
「本当はこの子を チーフ(ちいママ)にしたかったのよ」 と
実際に チーフに決まっていたホステスの前で 私を紹介した。
苦笑いするしかなかった。
りつ子ママは私だけを常に特別扱いにした。
別に他の女性と 友達になりたいとは思わなかったけれども
健全なコミュニケーションが阻害されそうな程だった。
そして O部長もまた何故か私を贔屓し、 それを周りに隠そうとしなかった。
りつ子ママはともかく、
私だけを車で送るO部長の存在は ヒロの気に障ったようだ。
どっち向いてもめんどくさい状況に囲まれてしまった。
どんな条件を出されても オープニングしか手伝わないよ、 と
ヒロに 繰り返し言うしかなかった。
開店までカウントダウンが始まった頃、
りつ子ママからポートピアホテルに呼び出された。
車で来てくれ、 と言う。
声が妙にくぐもっている。
言われた通り 私は 指定された部屋に向かった。
そこには 半裸でベッドに横たわるりつ子ママと
見知らぬ大柄な女性が1人いた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
オープニング要員となった里香と共に あの後
りつ子ママの知り合いのセレクトショップに連れて行かれたそうな。
2人とも 試着室に篭ったまま 次々に持ってこられた服を
着せ替え人形のように着た挙句 それぞれ1着ずつ持ち帰ったとのこと。
値札を見て 不安そうな顔をすると りつ子ママがウィンクして
「気にせんでええよ」 と 言ったらしい。
「大人っぽいのを無理して着るから いもくさくなるねん、 って言われたわ」と
楽しそうな声の治子。
数日後に また別の店で服を用意するらしく、
「りつ子ママって ぽんぽん言うけど いい人よね」 と 治子は続ける。
源氏名を決めた、 とか 彼氏には内緒にする、 とか
治子の声は興奮していた。
お嬢さん風に仕上がった治子と里香と共に
開店に向けてのミーティングに幾度となく参加した。
もちろん 私たちの他にもホステスはたくさんいる。
私や里香のようなオープニング要員も何名もいるのだが、
誰がそうだかなんて 興味がなかった。
ミーティングは レジャー会社の担当であるO部長が中心となってすすめられる。
O部長に初めて会った時、 りつ子ママは
「本当はこの子を チーフ(ちいママ)にしたかったのよ」 と
実際に チーフに決まっていたホステスの前で 私を紹介した。
苦笑いするしかなかった。
りつ子ママは私だけを常に特別扱いにした。
別に他の女性と 友達になりたいとは思わなかったけれども
健全なコミュニケーションが阻害されそうな程だった。
そして O部長もまた何故か私を贔屓し、 それを周りに隠そうとしなかった。
りつ子ママはともかく、
私だけを車で送るO部長の存在は ヒロの気に障ったようだ。
どっち向いてもめんどくさい状況に囲まれてしまった。
どんな条件を出されても オープニングしか手伝わないよ、 と
ヒロに 繰り返し言うしかなかった。
開店までカウントダウンが始まった頃、
りつ子ママからポートピアホテルに呼び出された。
車で来てくれ、 と言う。
声が妙にくぐもっている。
言われた通り 私は 指定された部屋に向かった。
そこには 半裸でベッドに横たわるりつ子ママと
見知らぬ大柄な女性が1人いた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
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水商売は、 学生バイトとしては やはり実入りが激しく良い。
服の趣味は 元々派手めが好きとはいえ
生活そのものは質素だった。
親元にいたし。
ちょっと割のいいバイト料程度の金額を手元に残して、
証券会社の投資商品を買う形で貯金していた。
だけど 水っぽい雰囲気がにじみ出てしまうのか、
芦屋の店で働きだして数ヶ月経った頃、
大学の下宿組の友達3人が 私のバイトを知りたがった。
一人の下宿先で 吊るし上げられて白状したら
「私もやりたいなあ」 と 異口同音。
そして次には
「どこか 私でも働けそうなところ、 ない?」 と 異口同音上書き。
Y氏と知り合ったクラブMのホステスりつ子さんから
三宮でお店を出すので手伝って欲しい、 と 言われた時期だったので
その話をすると 3人とも乗り気。
「素人っぽさ」 は ひとつのキャラとして売りになる。
りつ子さんの店といっても 大手レジャー会社が企画した シリーズ展開の店の一つで
彼女は雇われママをするに過ぎない。
私の目から見ると 大手資本の店ならば トラブル事が少ないだろうと
友人を紹介しやすかったのだ。
というのも、 かつてのクラブMで
りつ子さんと私が控え室で雑談を交わしていたら
マネージャーがあわてて私を物陰に呼びつけ
りつ子さんは金銭関係について要注意人物だから
深く関わってはいけない、と懇願されるように言われたことがあり
りつ子さんの 「手伝って」 は 気の重い申し出だったのだ。
美代に誘われて働き出した芦屋の店を言い訳に渋ると
「じゃ オープニングだけ」 とゴリ押しされたのだった。
さて、 友人3人を りつ子さんに紹介したわけだが
そこで りつ子さんに 「これからは ママと呼んで」 と 強く言われた。
そして 紹介した3人のうち、
1人はOK、 1人はオープニング3日間だけ、 1人はいらない、 との結論。
「もし 友達と一緒じゃなきゃイヤだ、 というのなら 3人とも来なくて結構。
厳しいけれど 給料もらって仲良しごっこはできへんのよ。 今決めて」と
ばしっと 言われて その通りとなった。
3人とも 水商売の面接とあって、 可能な限り大人っぽい服に化粧で来たのだが
雇用が決まった二人は
「服も化粧も 素人っぽいというより いもくさい」 と
けちょんけちょんに言われ 「服買いにいくよ」と 連れて行かれた。
「いらない」と言われた一人の子と私がその場に取り残されたが
一緒にい辛かったので 「買物したいから」 と そそくさと逃げた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
服の趣味は 元々派手めが好きとはいえ
生活そのものは質素だった。
親元にいたし。
ちょっと割のいいバイト料程度の金額を手元に残して、
証券会社の投資商品を買う形で貯金していた。
だけど 水っぽい雰囲気がにじみ出てしまうのか、
芦屋の店で働きだして数ヶ月経った頃、
大学の下宿組の友達3人が 私のバイトを知りたがった。
一人の下宿先で 吊るし上げられて白状したら
「私もやりたいなあ」 と 異口同音。
そして次には
「どこか 私でも働けそうなところ、 ない?」 と 異口同音上書き。
Y氏と知り合ったクラブMのホステスりつ子さんから
三宮でお店を出すので手伝って欲しい、 と 言われた時期だったので
その話をすると 3人とも乗り気。
「素人っぽさ」 は ひとつのキャラとして売りになる。
りつ子さんの店といっても 大手レジャー会社が企画した シリーズ展開の店の一つで
彼女は雇われママをするに過ぎない。
私の目から見ると 大手資本の店ならば トラブル事が少ないだろうと
友人を紹介しやすかったのだ。
というのも、 かつてのクラブMで
りつ子さんと私が控え室で雑談を交わしていたら
マネージャーがあわてて私を物陰に呼びつけ
りつ子さんは金銭関係について要注意人物だから
深く関わってはいけない、と懇願されるように言われたことがあり
りつ子さんの 「手伝って」 は 気の重い申し出だったのだ。
美代に誘われて働き出した芦屋の店を言い訳に渋ると
「じゃ オープニングだけ」 とゴリ押しされたのだった。
さて、 友人3人を りつ子さんに紹介したわけだが
そこで りつ子さんに 「これからは ママと呼んで」 と 強く言われた。
そして 紹介した3人のうち、
1人はOK、 1人はオープニング3日間だけ、 1人はいらない、 との結論。
「もし 友達と一緒じゃなきゃイヤだ、 というのなら 3人とも来なくて結構。
厳しいけれど 給料もらって仲良しごっこはできへんのよ。 今決めて」と
ばしっと 言われて その通りとなった。
3人とも 水商売の面接とあって、 可能な限り大人っぽい服に化粧で来たのだが
雇用が決まった二人は
「服も化粧も 素人っぽいというより いもくさい」 と
けちょんけちょんに言われ 「服買いにいくよ」と 連れて行かれた。
「いらない」と言われた一人の子と私がその場に取り残されたが
一緒にい辛かったので 「買物したいから」 と そそくさと逃げた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
三宮の店を辞めた後、 Y氏からは何度か連絡があった。
Y氏の謝罪したい、 という趣旨の訴えと 私の気のない返事。
ある日 ポートピアホテルでイベントのバイトの帰りに
迎えに来てもらうことにした。
足になってもらえるなら 話でも聞こうか、 と。
会うと 別に怒ってもいない自分を発見した。
以後 何度ともなく食事をしたり 飲みに行ったり。
話すと 適度に楽しい。 歌を聴くと 毎回くらっとくる。
しかし あの夜のことがあるので Y氏は 明らかに冗談以上のことは言ってこない。
ある日 ショーウィンドウに飾ってある白い麻のジャケットを見て
「今着てるのより あっちのがそのスカートに合うで」 と Y氏が言った。
確かに素敵だが 値段も素敵。
自分ではもちろん買えないし 買ってもらうのもイヤだ。
固辞したが 「どんでん返しは もうないから」 と 押し切られた。
これを皮切りに Y氏は装飾品を中心に いろんなものを買ってくれた。
Y氏は競走馬を持っており 勝つ度におすそ分けだと 現金もくれた。
私から アレが欲しい コレが欲しい、 とは言わなかったが
すっかりズルさを身につけたと思う。
とはいえ 実際のところ 私はY氏を好きになっていた、 一人の男性として。
Y氏の家族だとか 私の親とか そんな深いところは考えるまでもない
「好き」ではあったが。
酔った勢いでちゅー、 そして けらけらと笑いながら するっと逃げて。
逃げずに 懐に入り込んだら どんな香りがするのだろう。
そして ある日 六甲北一番地に誘われた。
当時は そこらのシティホテルより人気のあった
高級連れ込み宿である。
連れ込み宿のくせに 100平米超の広さの部屋があったり、
専属シェフがいたり 予約出来たり・・・
何よりも 下品な風情が微塵もないのだ。
「最初の夜は六甲北一番地にするから」 という口説きギャグが存在したくらいだ。
部屋の詳細は 緊張して覚えていない。
ワインとシェフ料理が運ばれ・・・ワインを二人で飲む、 飲む、 飲む。
しこたま酔って いたそうとしたのだが 飲みすぎた為に うにゃうにゃごごごごぴー・・・・
しばらくY氏とは会わなかった。
多分 お互い気が済んだのだと思う。
次に 久しぶりに会った時、 二人とも妙にすがすがしい顔で 未遂事件を笑いあった。
今はどうしているのだろう、 と 会社を検索してみると
増資して業務規模を拡大し 着実に業績を上げているようだ。
HPの顔写真は カメラ目線でないY氏らしいショットだった。
私の頭の中では あの「卒業写真」 が流れていた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
Y氏の謝罪したい、 という趣旨の訴えと 私の気のない返事。
ある日 ポートピアホテルでイベントのバイトの帰りに
迎えに来てもらうことにした。
足になってもらえるなら 話でも聞こうか、 と。
会うと 別に怒ってもいない自分を発見した。
以後 何度ともなく食事をしたり 飲みに行ったり。
話すと 適度に楽しい。 歌を聴くと 毎回くらっとくる。
しかし あの夜のことがあるので Y氏は 明らかに冗談以上のことは言ってこない。
ある日 ショーウィンドウに飾ってある白い麻のジャケットを見て
「今着てるのより あっちのがそのスカートに合うで」 と Y氏が言った。
確かに素敵だが 値段も素敵。
自分ではもちろん買えないし 買ってもらうのもイヤだ。
固辞したが 「どんでん返しは もうないから」 と 押し切られた。
これを皮切りに Y氏は装飾品を中心に いろんなものを買ってくれた。
Y氏は競走馬を持っており 勝つ度におすそ分けだと 現金もくれた。
私から アレが欲しい コレが欲しい、 とは言わなかったが
すっかりズルさを身につけたと思う。
とはいえ 実際のところ 私はY氏を好きになっていた、 一人の男性として。
Y氏の家族だとか 私の親とか そんな深いところは考えるまでもない
「好き」ではあったが。
酔った勢いでちゅー、 そして けらけらと笑いながら するっと逃げて。
逃げずに 懐に入り込んだら どんな香りがするのだろう。
そして ある日 六甲北一番地に誘われた。
当時は そこらのシティホテルより人気のあった
高級連れ込み宿である。
連れ込み宿のくせに 100平米超の広さの部屋があったり、
専属シェフがいたり 予約出来たり・・・
何よりも 下品な風情が微塵もないのだ。
「最初の夜は六甲北一番地にするから」 という口説きギャグが存在したくらいだ。
部屋の詳細は 緊張して覚えていない。
ワインとシェフ料理が運ばれ・・・ワインを二人で飲む、 飲む、 飲む。
しこたま酔って いたそうとしたのだが 飲みすぎた為に うにゃうにゃごごごごぴー・・・・
しばらくY氏とは会わなかった。
多分 お互い気が済んだのだと思う。
次に 久しぶりに会った時、 二人とも妙にすがすがしい顔で 未遂事件を笑いあった。
今はどうしているのだろう、 と 会社を検索してみると
増資して業務規模を拡大し 着実に業績を上げているようだ。
HPの顔写真は カメラ目線でないY氏らしいショットだった。
私の頭の中では あの「卒業写真」 が流れていた。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
無性に腹が立って 何も言わずに車を降りた。
交通量の少ない時間ではあったが 国道なのでタクシーはつかまるだろう。
気分的には 勢いよくずんずん歩きたいのに よろよろだ。
酔って 疲れて 眠たくて。
Y氏が のたのたと追いかけてきた。
彼も 酔ってるし 疲れているし 眠たいのだ。
待ってくれ、 と 腕をつかまれた時 急に悲しくなった。
触らないで、 手ぇ 離して。
娘の話まで出しといて・・・
怒涛の勢いで怒鳴りたいのに 声は思いのほか小さく
だんだんと泣き崩れて 何を言っているのかわからなくなった。
蹴飛ばそうとして パンプスはあらぬ場所に飛んでいってしまった。
この時 Y氏が どんな顔をして どんな反応をしたのかは 覚えていない。
翌朝...すっかり昼だったが 目覚めると そこは自宅のベッドだった。
ちゃんと化粧も落としていたし 着替えてもいた。
パンプスも両足分揃っている。
頭が痛い。
母の目が冷たい。
夕方 早い時間に店に行き、 マネージャーとママに やめることを告げた。
すっかり懲りていた。
理由は 親バレということにしておいたが
そんな言い訳は やめる側の常套句なのだろう。
ママは 私が他の店に引き抜かれたかどうかばかりを 気にしていた。
もう たくさんだ。
5日分のバイト代は 後日、 お店の指定する給料日に取りに行った。
そこで再びママに 引抜き云々の探りを入れられた。
ママもしつこいなー、 と 店を出て 生田ロードの喫茶店・上高地に入り
周りに見えないように バッグの中で こそこそと給料袋を開けてみた。
・・・・・!
5日でコレ?
慌てて明細をみる。
最初に提示された金額より 時給が1000円も高く計算されている。
今なら 引抜き防止対策だとわかるのだが
現金を見た私は 辞めたことに舌打ちした。
ちっ...
それでもこれは 思い出バイトで、
水商売を再びしようとは考えていなかった。
初めての水商売の話は これで終了。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
交通量の少ない時間ではあったが 国道なのでタクシーはつかまるだろう。
気分的には 勢いよくずんずん歩きたいのに よろよろだ。
酔って 疲れて 眠たくて。
Y氏が のたのたと追いかけてきた。
彼も 酔ってるし 疲れているし 眠たいのだ。
待ってくれ、 と 腕をつかまれた時 急に悲しくなった。
触らないで、 手ぇ 離して。
娘の話まで出しといて・・・
怒涛の勢いで怒鳴りたいのに 声は思いのほか小さく
だんだんと泣き崩れて 何を言っているのかわからなくなった。
蹴飛ばそうとして パンプスはあらぬ場所に飛んでいってしまった。
この時 Y氏が どんな顔をして どんな反応をしたのかは 覚えていない。
翌朝...すっかり昼だったが 目覚めると そこは自宅のベッドだった。
ちゃんと化粧も落としていたし 着替えてもいた。
パンプスも両足分揃っている。
頭が痛い。
母の目が冷たい。
夕方 早い時間に店に行き、 マネージャーとママに やめることを告げた。
すっかり懲りていた。
理由は 親バレということにしておいたが
そんな言い訳は やめる側の常套句なのだろう。
ママは 私が他の店に引き抜かれたかどうかばかりを 気にしていた。
もう たくさんだ。
5日分のバイト代は 後日、 お店の指定する給料日に取りに行った。
そこで再びママに 引抜き云々の探りを入れられた。
ママもしつこいなー、 と 店を出て 生田ロードの喫茶店・上高地に入り
周りに見えないように バッグの中で こそこそと給料袋を開けてみた。
・・・・・!
5日でコレ?
慌てて明細をみる。
最初に提示された金額より 時給が1000円も高く計算されている。
今なら 引抜き防止対策だとわかるのだが
現金を見た私は 辞めたことに舌打ちした。
ちっ...
それでもこれは 思い出バイトで、
水商売を再びしようとは考えていなかった。
初めての水商売の話は これで終了。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
Y氏は 当時40代前半。
ゴルフが好きで 飲んで笑うのが好きで
ゴルフと酒以外はほぼ仕事漬けで 少し腹回りが気になる
よくあるタイプの小金持ちな経営者だった。
待合せに指定されたバーに おずおずと入り 言われた通りY氏の名前を出すと
「わぁYちゃん、 彼女ほんまに来やったでー、 よかったな~」 と
ばたばたとY氏のいる席に 案内された。
Y氏は よぉ来たなぁ、 と 遠来の客を迎えるように笑い、
腹減ってへんか、 余力あれば飲めよ、 無理して飲まんでええで、 と言った。
私は 少し前にお店で食べたフルーツのせいでお腹は空いていなかったが
適度に酔っていた。
その時間のホステスなんて みんなそうだ。
私に何を話すわけでもなく カウンターの中の
さっき私を案内してくれたおねえさんと 軽く下ネタを飛ばしつつ談笑するY氏。
どの程度 会話に参加していいのかわからず 落着きなくグラスをもてあそぶ私。
「歌うで」 いつの間にか歌う段取りのY氏。
流れてきたのは 松任谷由実の卒業写真。
へぇ~、 意外なセレクト...と Y氏を眺めていた。
♪ 悲しいことがあると・・・
歌い始めたその声は Y氏の外見からは想像できない程甘く、
抑えた声量はどこまでも優しく 耳に絡みつく。
ノリよく盛り上げることなんて出来ない程のカルチャーショックで
私は いつまでも目と口を開いて Y氏を見ていた。
Y氏を思い出す度に 頭の中でBGMとして流れるのは この時のこの曲である。
「学生時代にな、 バンドでプロ目指してた」 と 歌い終わったY氏は言った。
そして 私とY氏は いくらか話をした。
楽しい時間を過すと 酒も美味しい...楽しがってるやん、 私。
しかし 時が過ぎると 気になるのは帰宅時間。
夜中の2時をすぎていた。 親バレは最も避けたいこと。
そろそろ私...と 腕時計を見ながら切り出すと
Y氏は 時間というものの存在に初めて気付いたような顔をした。
「ほんまやな、 キリないな。 帰したらんとなぁ...でも もうちょっとだけ」 と
Y氏は 私を呼び出した理由を説明したい、 と
酔いと眠気で充血した目と 少しロレツおかしな口調で言い始めた。
自分(関西では二人称を指すことが多い)なぁ、 水商売 初めてやろ?
この先 ずっとホステスするんか?
小遣い稼ぎのつもりなんやろ、 立派な大学行ってるんやし。
そやったらなぁ、 水商売に慣れる前にやめとき。
この仕事がマイナスばっかりとは言わんけどな。
私の目も 酔いと眠気で充血していたはずである。
グラスの外側を流れ落ちる雫を じっと見ていた。
俺にはな、 娘がおるんや、 今 中学生や。
女の子のおる店は好きやで。
そやけど なーんの苦労も知らん子が
一生懸命おっさんの間に入って無理に笑ってるん見るとな、
娘とだぶってもーてあかんねん。
こんな時間まで 娘が帰ってこないなんて 父親としてたまらんねん。
わかりました、 やめます。
明日お店に言います。
涙目になった私は そう答えた。
「ほな 送ったるわ」
タクシーの中でぐったりする私。 もう眠りたい。
ん...?
運転手に告げる方向が不自然な気がする。
「なぁ 寄っていこか」
ビニール製のカーテンが見えた。
...ちょっと待ってーな、 娘の話は何やったんや。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
ゴルフが好きで 飲んで笑うのが好きで
ゴルフと酒以外はほぼ仕事漬けで 少し腹回りが気になる
よくあるタイプの小金持ちな経営者だった。
待合せに指定されたバーに おずおずと入り 言われた通りY氏の名前を出すと
「わぁYちゃん、 彼女ほんまに来やったでー、 よかったな~」 と
ばたばたとY氏のいる席に 案内された。
Y氏は よぉ来たなぁ、 と 遠来の客を迎えるように笑い、
腹減ってへんか、 余力あれば飲めよ、 無理して飲まんでええで、 と言った。
私は 少し前にお店で食べたフルーツのせいでお腹は空いていなかったが
適度に酔っていた。
その時間のホステスなんて みんなそうだ。
私に何を話すわけでもなく カウンターの中の
さっき私を案内してくれたおねえさんと 軽く下ネタを飛ばしつつ談笑するY氏。
どの程度 会話に参加していいのかわからず 落着きなくグラスをもてあそぶ私。
「歌うで」 いつの間にか歌う段取りのY氏。
流れてきたのは 松任谷由実の卒業写真。
へぇ~、 意外なセレクト...と Y氏を眺めていた。
♪ 悲しいことがあると・・・
歌い始めたその声は Y氏の外見からは想像できない程甘く、
抑えた声量はどこまでも優しく 耳に絡みつく。
ノリよく盛り上げることなんて出来ない程のカルチャーショックで
私は いつまでも目と口を開いて Y氏を見ていた。
Y氏を思い出す度に 頭の中でBGMとして流れるのは この時のこの曲である。
「学生時代にな、 バンドでプロ目指してた」 と 歌い終わったY氏は言った。
そして 私とY氏は いくらか話をした。
楽しい時間を過すと 酒も美味しい...楽しがってるやん、 私。
しかし 時が過ぎると 気になるのは帰宅時間。
夜中の2時をすぎていた。 親バレは最も避けたいこと。
そろそろ私...と 腕時計を見ながら切り出すと
Y氏は 時間というものの存在に初めて気付いたような顔をした。
「ほんまやな、 キリないな。 帰したらんとなぁ...でも もうちょっとだけ」 と
Y氏は 私を呼び出した理由を説明したい、 と
酔いと眠気で充血した目と 少しロレツおかしな口調で言い始めた。
自分(関西では二人称を指すことが多い)なぁ、 水商売 初めてやろ?
この先 ずっとホステスするんか?
小遣い稼ぎのつもりなんやろ、 立派な大学行ってるんやし。
そやったらなぁ、 水商売に慣れる前にやめとき。
この仕事がマイナスばっかりとは言わんけどな。
私の目も 酔いと眠気で充血していたはずである。
グラスの外側を流れ落ちる雫を じっと見ていた。
俺にはな、 娘がおるんや、 今 中学生や。
女の子のおる店は好きやで。
そやけど なーんの苦労も知らん子が
一生懸命おっさんの間に入って無理に笑ってるん見るとな、
娘とだぶってもーてあかんねん。
こんな時間まで 娘が帰ってこないなんて 父親としてたまらんねん。
わかりました、 やめます。
明日お店に言います。
涙目になった私は そう答えた。
「ほな 送ったるわ」
タクシーの中でぐったりする私。 もう眠りたい。
ん...?
運転手に告げる方向が不自然な気がする。
「なぁ 寄っていこか」
ビニール製のカーテンが見えた。
...ちょっと待ってーな、 娘の話は何やったんや。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆