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ヒロの通う大学は 私の通っていた大学と そう離れておらず、
車で通学していたヒロは 空き時間に遊びに来たり
お昼ご飯を誘いに来たりして
マメに一緒にいる時間を 作ろうとする。
「お互いのこと、 何も知らないから」 と ヒロは言う。
それを埋める為に 時間を使うのだと。
妙な形で始まった私とヒロだが
ヒロのおかげで 「知らないこと」 は 急速になくなっていき
お互いにとって 大切な人となった。
美代には 二人のことは言わなかった。
彼女だけではなく、 店の関係者には誰にも言わなかった。
やがて 美代はヒロに接近し始めた。
「美代ちゃん、 かわいいけど元々タイプじゃないし
俺は今 貴子が好きなんや」 と ヒロは私に言った。
美代は直球を投げるタイプではなく、
ヒロも 適当に態をかわすことしか出来ない状態だったが
ある日 煮詰まった美代が たまらず直球を投げてきたとき、
ヒロは 私とのことを告げた。
美代は ショックで店をしばらく休んだ。
私は フォローの電話を入れようとしたが
「こじれるだけやで」 と ヒロは止めた。
そして私は 友達としての美代を失った。
ヒロとの始まりの話は ここで終了。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
車で通学していたヒロは 空き時間に遊びに来たり
お昼ご飯を誘いに来たりして
マメに一緒にいる時間を 作ろうとする。
「お互いのこと、 何も知らないから」 と ヒロは言う。
それを埋める為に 時間を使うのだと。
妙な形で始まった私とヒロだが
ヒロのおかげで 「知らないこと」 は 急速になくなっていき
お互いにとって 大切な人となった。
美代には 二人のことは言わなかった。
彼女だけではなく、 店の関係者には誰にも言わなかった。
やがて 美代はヒロに接近し始めた。
「美代ちゃん、 かわいいけど元々タイプじゃないし
俺は今 貴子が好きなんや」 と ヒロは私に言った。
美代は直球を投げるタイプではなく、
ヒロも 適当に態をかわすことしか出来ない状態だったが
ある日 煮詰まった美代が たまらず直球を投げてきたとき、
ヒロは 私とのことを告げた。
美代は ショックで店をしばらく休んだ。
私は フォローの電話を入れようとしたが
「こじれるだけやで」 と ヒロは止めた。
そして私は 友達としての美代を失った。
ヒロとの始まりの話は ここで終了。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
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酔っててあまり覚えていないのだが
ヒロを口説いたのは 私らしい。
その数ヶ月前 私は付き合っていた男と
ひどい別れを経験していた。
ヒロも 同じ頃 付き合っていた娘と 別れたとのこと。
経緯は覚えていないながらも
ホテルに入る前、
「美代の気持ち 知ってるんでしょ?」 と
不安げに 聞いたことは覚えている。
「・・・知らなかった。
でも今 俺は貴子と一緒にいたいからここにいる」
勢いと酔いと。
詳細は覚えていないながらも
心地よかった記憶はある。
だけど 朝 目がさめて心の中で呟いたのは
「しまった」 だった。
心地よさに引きずられると イヤな思いをするだろう。
勢いと酔いの結果なのだから。
これから 店で顔を合わせても
何もなかったような顔をしよう。
美代のことは別だ。
私が大切なのは 私自身だもの。
ところが 次に店に入った時
ヒロは 何気ない顔でお尻を触ってきた。
きっと睨むと 無邪気に微笑む。
その日 ヒロは店が終わると
家まで送ってくれた。
「ヤリ逃げする気はないよ。大事にするよ。」 と。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
ヒロを口説いたのは 私らしい。
その数ヶ月前 私は付き合っていた男と
ひどい別れを経験していた。
ヒロも 同じ頃 付き合っていた娘と 別れたとのこと。
経緯は覚えていないながらも
ホテルに入る前、
「美代の気持ち 知ってるんでしょ?」 と
不安げに 聞いたことは覚えている。
「・・・知らなかった。
でも今 俺は貴子と一緒にいたいからここにいる」
勢いと酔いと。
詳細は覚えていないながらも
心地よかった記憶はある。
だけど 朝 目がさめて心の中で呟いたのは
「しまった」 だった。
心地よさに引きずられると イヤな思いをするだろう。
勢いと酔いの結果なのだから。
これから 店で顔を合わせても
何もなかったような顔をしよう。
美代のことは別だ。
私が大切なのは 私自身だもの。
ところが 次に店に入った時
ヒロは 何気ない顔でお尻を触ってきた。
きっと睨むと 無邪気に微笑む。
その日 ヒロは店が終わると
家まで送ってくれた。
「ヤリ逃げする気はないよ。大事にするよ。」 と。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
貴子になって程なく、
私と美代は お客さんの人気を二分するようになった。
なんのことはない、 目新しかっただけなのだが
面白くないのは 他の女性達。
ありがちでドラマにもならない話だが「いじめ」を受けるようになった。
妬むほどのモンじゃなかろうに、 と
私は 特に気にはしなかったのだが
美代はすっかり参っていた。
そして 寒々しい空気を敏感に感じ取って
私たち二人に 何かと気を使ってくれたのは 黒服のヒロとやまちゃんだった。
彼らも学生アルバイトなのだが
私の目から見て バイトの領域をすっかり越えた 縁の下の立役者。
体育会系丸出しのヒロと
クールな外見とギャグ好きのやまちゃん。
いいコンビで 彼らと会話するのを楽しみにしているお客さんも多数いた。
美代は それまで腐れ縁のように付合い続けていた彼氏と
いよいよ危なくなっていた。
「もう ええねん」 と 言っていたが
どうやら ヒロに惚れたのが 「もう ええねん」 の原因だったようだ。
美代は そうは言わなかったが 誰の目から見ても それは明らかだった。
なのに ある日 私は勢いでヒロと寝てしまったのだ。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
私と美代は お客さんの人気を二分するようになった。
なんのことはない、 目新しかっただけなのだが
面白くないのは 他の女性達。
ありがちでドラマにもならない話だが「いじめ」を受けるようになった。
妬むほどのモンじゃなかろうに、 と
私は 特に気にはしなかったのだが
美代はすっかり参っていた。
そして 寒々しい空気を敏感に感じ取って
私たち二人に 何かと気を使ってくれたのは 黒服のヒロとやまちゃんだった。
彼らも学生アルバイトなのだが
私の目から見て バイトの領域をすっかり越えた 縁の下の立役者。
体育会系丸出しのヒロと
クールな外見とギャグ好きのやまちゃん。
いいコンビで 彼らと会話するのを楽しみにしているお客さんも多数いた。
美代は それまで腐れ縁のように付合い続けていた彼氏と
いよいよ危なくなっていた。
「もう ええねん」 と 言っていたが
どうやら ヒロに惚れたのが 「もう ええねん」 の原因だったようだ。
美代は そうは言わなかったが 誰の目から見ても それは明らかだった。
なのに ある日 私は勢いでヒロと寝てしまったのだ。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
大学時代、 夜の街にいた。
友達の美恵が 水商売のバイトを始めた。
程なく 遊びにおいで、 と 声がかかったので
飲むのが好きな私は ほいほいと出向いた。
そして そこのママに 口説かれたのだ。
どうやら美恵は 新しい女の子を紹介する、 と 言っていたようだ。
名前、 どうする? と聞かれ
本名は イヤだ、 と咄嗟に思った。
美恵は ママの聞き間違いから 「美代」 になっていた。
働く話がまとまったものの
初めての水商売に 私はかなり腰を引いていた。
学校も年齢も内緒にして欲しいと お願いしといて
本名で店に出るつもりはない。
考えた挙句 貴子 になった。
私が生まれて 名前を付ける時、
本名と 最終的に一騎打ちになったと聞かされていた名前である。
その日から 週に数度、その店の中だけで
私は貴子になった。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆
友達の美恵が 水商売のバイトを始めた。
程なく 遊びにおいで、 と 声がかかったので
飲むのが好きな私は ほいほいと出向いた。
そして そこのママに 口説かれたのだ。
どうやら美恵は 新しい女の子を紹介する、 と 言っていたようだ。
名前、 どうする? と聞かれ
本名は イヤだ、 と咄嗟に思った。
美恵は ママの聞き間違いから 「美代」 になっていた。
働く話がまとまったものの
初めての水商売に 私はかなり腰を引いていた。
学校も年齢も内緒にして欲しいと お願いしといて
本名で店に出るつもりはない。
考えた挙句 貴子 になった。
私が生まれて 名前を付ける時、
本名と 最終的に一騎打ちになったと聞かされていた名前である。
その日から 週に数度、その店の中だけで
私は貴子になった。
◆◆◆ 目次 ◆◆◆